年収の経済格差を拡大する金融システム
🔮 年収による格差
政府が経済支援の予算を執行すると、支援は公平に行われるので、最初は中低所得層もお金を手にします。中低所得層がそのお金を使うと、お金は社会を流通して企業や個人に流れて行きますが、大半が富裕層に流れ着いてその預金口座に滞留・沈殿してしまうことを前回までに書きました。中低所得層への支援のための通貨も、流れ着く先は富裕層なのです。(黒字企業にも流れ着きますが、今回は家計に絞って話をします。)それでは、どうして、どうやって、お金は富裕層に集まるのか?
まず、年収の高い層が、社会を流通するお金を多く受け取ります。年収の格差はわかりやすいですね。
🔮 年収以外の格差
でも、実は、年収以外にも富裕層がお金を得る仕組みがあります。
下記のグラフは、日本の二人以上の勤労世帯について、世帯年収と年収以外の収支の関係を表した図です(こちらの論文より)。横軸は、世帯年収を少ない方から順に左から並べて右端が一番年収が高い世帯グループになっています。縦軸は年収以外の収支ですが、その内容は、金融資産(預貯金や株式等)や負債(借金)で生じる、利子・配当等のお金の受取や支払です。縦軸は0%より上がお金を受け取っていること、下側はお金を支払っていることを示しています。年収最上位の受け取り額を100%として、それ以外を相対値で表しています。
図から、年収の低い世帯は年収以外でお金を失い、年収の高いわずかな世帯が年収以外でお金を得ていることがわかります。横軸右端の年収最上位10%の、年収以外の受け取りは圧倒的です。
🔮 年収の格差を助長する金融システム
利子や配当は、現在の金融システムの根幹を支える要素なので、この図は、金融システムが格差拡大を助長するものであることを如実に表しています。
現行の金融システムは、もともと存在する年収の経済格差を更に拡大する方向に、通貨の再分配を行っているのです。
つまり、政府が経済支援を行えば行うほど、国内の通貨の量が増えて、富裕層が得をする仕組みに、今の世の中はなってる。それでは全然持続可能ではありません。昨今の経済支援は必須ですが、増えた通貨量を回収することが不可欠です。
また、金融システムの一部の、付加価値をなんら創造しない「投機」を規制することも不可欠です。通貨はゼロサムですから、投機は他人の通貨を奪うだけなのです。
🔮 年収格差を抑制する「循環する通貨」
年収が、実体経済の中で得た正当な対価なら、多く得ても正当です。例えば往年のイチローさんが年収3億円を得ていても文句言う人は誰もいなかったと思います。たぐいまれな才能と人並外れた努力の持ち主で、多くの人々に感動を与えていましたからね。
でも、金融システムがその年収格差を助長することは許されるものではないです。それが許されると、経済格差は延々と拡大され続けます。「お金がお金を呼ぶ」とよく言われますが、正確にはただ呼ぶのではなく、「他人のお金を奪う」です。年収以外の金融システムは、年収の格差を縮小するものでなければ持続可能とは言えません。
それを可能にするのが、定率を回収する「循環する通貨」の仕組みです。一定の割合(例えば月に1%)が回収されるので、保有する金額の多寡で回収される金額が変わります。たくさん持っている人はたくさん回収される一方、持ってない人は回収されないで済みます。「循環する通貨」は、年収の格差を縮小する方向に通貨を再分配し、持続可能な協力型経済の形成を可能にします。
湧志創造