「循環する通貨」で持続可能な経済を
「循環する通貨」の仕組みは、持続可能なお金の循環を作り、地域経済を活性化します。
🧿家計と企業の間のお金の循環
ふだん私たちがサービスや商品に支払うお金は、それを提供しているお店や企業に行きます。毎年、家計から企業や商店などへ、そうやってお金が流れます。この流れを持続可能にするためには、今年、庶民から企業などに流れたお金の全額が、給料などとして、庶民に戻って来る必要があります。
🧿バブル崩壊前は循環していた
バブルになる前の日本では、家計と企業の間の循環が、わりとうまく行っていました。循環が持続するどころか、毎年増えて行っていました。企業は、生産性向上で増えた利益を従業員の賃金増に回したのです。当時は、「人間第一主義」の日本型経営であり、経営の目的は「従業員利益の最大化」でした。人々の給料が増えれば、消費が増え企業の利益も増えます。家計と企業の間のお金の循環が増えれば、経済成長するのです。
「会社の目的は社会貢献」と新人研修で習うような、「会社は社会の公器」だったその時代、大企業の従業員の多くが「会社は従業員のもの」と思っていました。「従業員利益の最大化」の経営も当たり前だったのです。
🧿株主資本主義と成果主義
バブルが起きると、企業は社会貢献を忘れ財テクに走るようになりました。その後のバブル崩壊で、日本型経営は古い時代のものとして否定されるようになり、海外から株主資本主義と成果主義が同時に入ってきます。株主資本主義のもとでは、会社は株主のものとされ、会社の目的は株主利益の最大化とされました。資本家の利益が増える一方で、従業員はコストと見なされ、成果=利益を出せない従業員は、給料を減らされたりリストラされたりして、企業から庶民へ戻るお金は毎年減り続けました。
富裕層と富裕企業がお金を銀行口座に溜めこむと、社会を流れるお金は減り続けます。こんな社会は、椅子取りゲームの椅子が毎年減り続けるような厳しい競争社会で、持続不可能です。
🧿税金の循環
上記の、家計と企業の間のお金の循環は、民間の循環でしたが、政府と民間の間の循環も同じです。今年、政府が予算執行で使ったお金は、ほとんどが民間へ流れます。来年も政府が予算執行するためには、今年、政府から民間へ流れたお金の全額が、税金などとして、政府に戻って来る必要があります。
こちらもバブル前はわりとうまく行ってました。法人税率は今の倍近くの43%など、個人も企業も所得が高いほど税負担が大きかった一方で、中間層以下では税や社会保険などの公的負担が今ほど重くなかったので、溜まっているところから取って足りてないところへ回すという、税金によるお金の循環がうまく回っていたのです。
🧿税金循環不全
90年代以降の新興国台頭と経済のグローバル化で、先進国は企業誘致のため法人税率を競って下げるようになり、現在の税率は23%と、以前の半分近くまで引き下げられました。減税で増えた企業の利益は、株主資本主義のもと株主=資本家へ行くようになり、一方で、従業員の給料は下がり続けました。法人税減税で収入が減った政府は、平成の初めに消費税を導入し、平成の30年間で税率を10%まで引き上げました。庶民は、給料が減ったうえに、消費税と社会保障費の増加で、政府から取られるお金は増えたのです。
一方で、高所得の個人は、法人を作り、所得をその法人に移すことで、法人税の低い税率を利用して節税することが可能となり、こうして、個人も企業も所得が高いほどお金を溜め込みやすくなりました。つまり、今の税制は所得の再配分とは逆に、お金のないところから取って、すでに余っているところへさらに配るような構造になっているのです。
🧿富裕層と富裕企業に溜めこまれ沈殿するお金
企業から家計への民間のお金の循環が減り続けると、経済は縮み続けます。それを補うため政府が借金して民間にお金を注ぎ込み、なんとか前年並みのGDPを維持していたのが、平成の30年間です。しかしその借金による政府のお金の注入も、富裕層と富裕企業に溜まるお金をさらに増やしていくことになり、平成の間に日本の経済格差は拡大しました。
対策として必要なのは、お金の循環です。いま世の中には、1500兆円を超える通貨量があります。このうち1000兆円が1年に1回でも使われれば、GDPは1000兆円になります。1年に2回使われればGDPは2000兆円です。お金は使われ社会を流れてこそ役に立つのです。
「循環する通貨」の仕組みでは、ある一定量のお金を取り分け、その金額を専用の地域通貨システムに閉じ込め循環させることで、最低限必要な通貨量を循環させることを目指します。
🧿循環する通貨
「循環する通貨」では、地域限定の専用の電子通貨システムを作って、人々への定額でのお金の供給と、流通しているお金の定率での回収を繰り返し、回収した金額をまた供給に回すことで、半永久的なお金の循環を作ります。
具体的には次のようなシステムです。毎月、月初に定額の金額、例えば3万円を、地域内だけで使える専用の電子通貨で人々に配ります。地域内の商店などもあらかじめ専用通貨を使えるようにしておきます。配られた専用通貨が地域内において購買に使用されることで、地域内の商店などにも専用通貨が流通します。その後、専用通貨の全ての保有者から、月末に、通貨保有の多寡に応じて定率、例えば1%(3万円保有なら300円)を回収し、次月のお金の定額供給に回します。
このように、「定額供給・定率回収」のシステムで、強制的なお金の循環を作ります。また、お金を使い切れば回収されないので、人々はお金をできるだけ使おうとします。この結果、お金の自発的な循環も促進され、経済が活性化されます。
🧿協力型社会を日本から世界へ
専用の電子通貨が使えるのは地域内のみなので、当初に導入された金額が地域外に散逸することはありません。このように、一定のお金を取り分け、その総額を専用の電子通貨に閉じ込める形で、人々へのお金の供給は定額で平等に、回収は保有の多寡に応じて定率で行うことで、お金を社会に巡らせることができ、地域内の経済を大きく活性化できます。「定額供給・定率回収」のこの仕組みは持続可能な経済活性化策です。
この仕組みは、一定のお金をただ循環させるものです。勤労収入の多寡を均一化するものではなく、企業の自由な活動を妨げることもありません。この仕組みの目的は、中低所得層を含む社会の隅々にまでお金を循環させることであり、協力型経済の形成です。少数が成功する競争型社会ではなく、全員が幸せになれる協力型社会です。世界中で経済格差が拡大し続け、競争型社会の不安定化が顕著ななか、協力型経済による持続可能な社会を、日本から発信して行きませんか。