ボーイングに見る堕落した株主資本主義
🧿二度の墜落事故に対する甘い評価
昨年、米ボーイング社の737MAX墜落(2度の事故で計346人の命を奪った)に関し1年半にわたる調査の結果が出て、「ボーイングとFAAの過失」との米議会の最終報告書が出たそうです(こちら、ロイター)。ボーイングと米連邦航空局(FAA)が過ちを「恐ろしいほど積み上げた」と結論づけたそうですが、過失じゃなくて故意と言ってもいいと、経緯を見ていると思います。過失なんて甘い評価で終わるとは。。
最初の事故は2018年10月インドネシア。犠牲者189人の大半はインドネシア人で、ボーイングもFAAも機体の欠陥を認めなかったので米国で大きな問題になることもなく、MAXは世界を飛び続けます。でもその裏でFAAは「何もしなければMAXは2、3年ごとに墜落事故を起こし、最大で15機の計2900人が亡くなる恐れがある」との分析をまとめていた・・・!!!(こちら、朝日新聞)
この経緯は、金融化の一つ、株主資本主義(金融資本主義)の弊害として、とても典型的です。つまり、人命よりお金ということ。。
🧿ボーイングもFAAも確信犯
ボーイング社内でも、事故前に問題の制御システムの誤作動が発覚していたそうです。でもFAAがボーイングに支配されてたため認証をボーイングがやっていたというから恐ろしすぎます。エンジンを支える重要部品がFAA基準を満たせないと技術者が訴えているのに「黙って認証するように」。拒んだら即クビです(こちら、朝日新聞)。
「米国で最も尊敬される航空機メーカーと、ダメな規制と腐敗に満ちた国の格安航空会社。どっちが信用できる?」。インドネシア当局について、米航空当局幹部はそう言い放ったそうです。そして2019年3月、エチオピアで2度目の事故が起きました。それでもなお、ボーイングは「安全性に絶対の自信がある」と言い張り、FAAもボーイングに寄り添ったそうです。。
🧿開発費用はケチって儲ける資本家と経営陣
この裏で何が行われていたかというと、開発費用は極限まで削減し、機体を新たに開発するよりソフトウエアの改造で済ませ、会社の利益はただひたすら株主還元に回し、経営者は株主と一緒になって儲け、最後に高額の退職金をもらって辞任。アメリカの腐りきった株主資本主義の典型です。
2014~2019年の間に行った自社株買いが406億ドル(約4兆円!)、配当も193億ドル(約2兆円!)。737MAXが運航停止になった2019年12月期ですらも、自社株買いで26億5100万ドルと、46億3000万ドルの配当を支払ったそうな。2014年初に140ドル程度だった株価は、2019年3月1日には446ドルまで上昇し、経営陣は多額の報酬を得たそうで。そして、CEOは一昨年末に引責辞任したけど、退職金68億円・・!
(以上、こちら、東洋経済)
🧿人命より自分たちのお金優先
株主還元しすぎて債務超過だとか。。会社は傷むけど、どうでもいいのです、政府が救ってくれるから。「ボーイングは株価と役員報酬ばかり気にかけ、機体を一新する費用をケチって危険な飛行機を飛ばした。」自社の欠陥を知りながら最後まで安全だと言い張ったボーイング、過失なんて甘いものじゃないでしょう。
朝日新聞の記者さんはこの件を、米メディアがあまり触れようとしないアメリカの暗部と言い、BLMと関連づけて、アジアとアフリカの人命軽視、つまり人種差別を指摘しています。米国内で墜落していたら米国の対応は全く違うものになっただろうと。
1970年代に、経済合理性が幅を利かせ始めたころ、車メーカのフォードが、車の欠陥のリコール費用と、死亡事故の補償費用を天秤にかけ、10年近く欠陥について沈黙していたそうです。その頃から事態は更に悪くなってます、残念ながら。。
🧿堕落した株主資本主義の弊害
今年に入ってボーイング777がまた事故を起こしました(こちら、ブルームバーグ)。エンジンの部品が民家に落下し、危うく大惨事となるところでした。これに対する対応は、その前の墜落事故よりは早かったけれど、業界専門家は、ボーイングの対応ぶりを評価するのは時期尚早だと釘を刺しています(こちら、ロイター)。前回の事故はアジアやアフリカだったけど、今回はアメリカ本土で起きたのも、対応が早かった一因でしょう。
堕落した株主資本主義は、経済格差を拡大し、人々を困窮させたうえに危険にさらします。日本発の公益資本主義の普及が望まれる理由です。